ポイント 6. 定着させる

「定着させる」では、改革促進フレームワークの作業を取り入れ、時を経ても利用できる、持続可能性を構築します。このワークストリームでは、反復可能なパターンや学んだ教訓に関するフィードバックループを作り、導入を積極的に管理し、実施後の計画と持続可能性計画を立てます。そうすることで、改革促進チームを解散させ、生み出された変化、行動、文化を運用的かつ受動的に (能動的ではなく) 管理できるようになります。「定着させる」には次の 3 つのサブポイントがあります。

6.1 フィードバックループを確立する

6.2 導入管理チェックリストを作成する

6.3 実施後の計画と持続可能性計画を策定する

6.1 フィードバックループを確立する

説明

フィードバックループにより、クラウドトランスフォーメーションによって生じる変化に健全かつ正確に対応する機会を従業員に与えることで、組織のパフォーマンスを調整できるようになります。フィードバックループの主な目的は、双方向の情報共有をサポートし、プロジェクト全体に主要な利害関係者を関与させ、コミュニケーションの有効性を監視するための情報を収集することです。フィードバックループに役立つチャネルには、1 対 1 の面談、フォーカスグループ、チーム、部門、スタッフのミーティング、エンゲージメントまたは組織の準備状況調査、コミュニケーションポータル、プロジェクトメールボックスなどがあります。組織がソーシャルメディアツールを使用している場合は、それらのチャネルを監視して、コメント、センチメント、評価ボタン (Like、Dislike)、トラフィックなどの形でフィードバックを収集することもできます。 

有益である理由

フィードバックループを確立することで、利害関係者からの正直な反応を収集し、実際のデータに基づいて改革促進の活動を洗練 (および継続的に改善) することができます。使いやすいツールがあれば、フィードバックを簡単に収集、分析し、クラウドトランスフォーメーション活動に組み込むことができます。ただし、フィードバックに基づいて行動し、フィードバックを受け取ったことを伝え、フィードバックの結果として行なわれた変更を明確にすれば、フィードバックループは強力かつ効果的になります。これにより、フィードバックの直接的な結果としてプログラムが改善され、間接的な結果として信頼を得られるようになります。 

活用場面

理想的には、測定の一環としてフィードバックループを計画に組み込む必要があります。フィードバックプロセスを設計する際には、問い合わせやコメントに対応する妥当な時間を決めます。フィードバックをするタイミングは、プログラムのスピードと流れと関連させて考えます。例えば、毎週、隔週、毎月のペースで収集されたフィードバックは、スクラムの振り返りミーティングへのインプットとして使用できます。 

6.2 導入管理チェックリストを作成する

説明

導入管理チェックリストは、改革促進の活動の有効性を確認し、クラウドトランスフォーメーションの全体的な導入状況を評価するのに役立ちます。導入管理チェックリストは、リーダーや利害関係者が新しいクラウド運用モデルへの移行に備え、関与し、そのメリットとビジネス価値を理解していることを確認します。このアクティビティでは、変更、コミュニケーション、リスク、トレーニングの戦略と計画を含め、すべての基本計画が策定され、実施が承認されていることを前提としています。 

有益である理由

導入管理チェックリストは、クラウドトランスフォーメーションに関連する 8 つの主要な成功要因を追跡する上で役立ちます。成功要因とは、目に見える積極的なリーダーシップ、変化への強制的な必要性、方向性の明確さ、幅広い参加、的を絞った効果的なコミュニケーション、プログラムの焦点が 1 つであること、測定可能な目標、統制のとれたプロジェクト管理のことです。 

活用場面

採用管理チェックリストを四半期ごとに見直すことで、クラウドトランスフォーメーションチームに中期的な計画期間が与えられ、必要に応じて調整を行うのに十分な柔軟性が生まれます。調査結果に基づいてアクションプランが作成されるので、定期的な (毎週または隔週) スクラム活動の一環として追跡できます。

6.3 実施後の計画と持続可能性計画を策定する

説明

実施後の計画および持続可能性計画とは、専任のクラウドトランスフォーメーションチームが解散した場合でも、組織が長期目標を達成するのに役立つ文書のことです。この計画の目的は、組織がクラウドトランスフォーメーションの取り組み後も人に関するメカニズムを維持できるようにすることです。 

変化が持続し、定着し、持続可能であるようにするために、以下の点を考慮してください。 

• 四半期ごとに変更スポンサーや他の上級管理者に報告することで、変化の測定を正式なものにします。

• 変更を従業員の業績計画や職務責任に組み込みます。

• フルタイムの社員の時間の一定割合を、変化の監視に充てます。

• 変更関連の活動を、年間業績計画やコンプライアンス研修計画など、他の正式なプロセスや方針と整合させます。

有益である理由

クラウドトランスフォーメーションプロセスの主要なステップ (移行やモダナイゼーションなど) が完了すると、さらなる変化が生じる可能性があります。こうした変化を維持するための長期的な戦略計画を立てることが不可欠です。例えば、組織の一部で文化や行動を変えると、別の部分でプロセスが変更されたり、他の事業部門でも同じ変更を繰り返す必要が生じる場合があります。 

活用場面

すべてのクラウドトランスフォーメーションには、改革促進計画の利害関係者と実施者が多数関与します。変更プロジェクトの継続的な持続可能性に誰が関与すべきかを明確にすることが重要です。そうすれば、プロジェクトが正式に完了した後、定期的 (例えば、プロジェクトの期間に応じて 3 か月後、6 か月後、12 か月後) に所有者を再評価およびレビューする時間枠を設定できます。プロジェクトの要件によっては、変更を監視して評価するために、継続的な改善計画や進行中のレビュー計画を策定しなければならない場合もあります。継続的な改善計画には以下が含まれる場合があります。 

• 目的 

• ガバナンス体制 

• 役割と責任

• イベント、レビュー、フィードバックセッションのカレンダー

• 成功の継続的測定

利害関係者の持続可能性を評価することに加えて、計画されたコミュニケーションが当初のクラウドトランスフォーメーション以降も継続されるようにします。コミュニケーションの推進者が移行を受け入れる準備ができていること、チームが十分なトレーニングを受け、タスクを遂行する時間があり、プログラムをサポートする技術的に準備が整っていることを確認してください。進行中のクラウド移行またはモダナイゼーションプロジェクトの終了時に、継続的なコミュニケーションを管理するための適切なリソースを特定します。考慮すべき主なアクションは次のとおりです。 

• 移行計画を策定する。

• 継続的なコミュニケーションの推進者を決定する。

• コミュニケーションの推進者とミーティングを行い、役割、責任、階層、アクションアイテムの概要を説明する。

• 移行会議を実施し、次のステップを確認する。

• コミュニケーションロードマップを作成する。

さらに、クラウド移行やモダナイゼーション後に発見されたトレーニングのギャップにも対処する必要があります。主な考慮事項は次のとおりです。 

• フィードバック、教訓、変更点をレビューする。

• 参加者からフィードバックを募る。 

• 必要に応じて追加のトレーニング支援資料を作成する。

• 改善トレーニングプランを文書化する (例えば、新入社員向け研修、四半期ごとまたはイベント主導型トレーニングの再教育など) 。

• 関連するすべてのトレーニング資料 (プロジェクト計画、監査および評価結果、トレーニング戦略、カリキュラムの概要、最終文書、評価フォームなど) のクラウドトランスフォーメーションアーカイブを作成する。 

• 資料の更新と改訂の計画を立案する。

これらの活動を持続可能性計画の一部に組み込むと、組織内で変化がどの程度持続しているかをよりよく理解できるようになります。忍耐強く、粘り強く、データに基づいて、系統立てて行動することで、組織が持続可能性計画を順守できるようになります。