ベストプラクティス 20.2 – 異なる料金アプローチを活用した数年計画のコストモデルを確立する
容量要件の数年計画を確立し、料金モデルをフルに活用して AWS の割引を最大限に利用しましょう。コストのベースラインを設定し、コストを追跡します。柔軟なクラウド料金モデルを利用すれば、インフラストラクチャをビジネス要件の変化に柔軟に合わせることができます。Savings Plans やリザーブドインスタンスの長期契約を結ぶ前に、少なくとも 3 年にわたる SAP システムの使用状況を予想し、計画します。テスト、SAP Quick Sizer の出力、成長予測を参考にして契約プランを検討し、ワークロードに対して最大限の割引を利用できるようにします。
提案 20.2.1 – 主要なビジネスイベントを理解して容量見積もりを立てる
SAP ワークロードは、使用パターンや運用時間が既知で、全般に安定しています。SAP システムについて、十分に理解された定常状態の容量ベースラインを確立しましょう。そのために、デプロイ初期の数週間にパフォーマンステストや本番稼働環境のモニタリングを実施します。
定常状態の容量見積もりは、以下を考慮に入れ、少なくとも 3 年の期間を対象として立てます。
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合併、買収、資産売却といった大規模なビジネスイベント
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データストレージの要件やビジネスプロセスの頻度に影響する可能性がある規制の変更
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通常のビジネスオペレーションによるデータの成長 (SAP HANA などのインメモリデータベースでは、データがストレージだけでなくコンピューティングのサイジングにも関係するため、特に重要)
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システムの大規模なアップグレード、交換、廃止
提案 20.2.2 – 1 年契約と 3 年契約のどちらが適切かを評価する
SAP ワークロードの中に 3 年契約からメリットを得るものがどれだけあるかを評価し、容量見積もりに基づいて割引を最大限活用します。以下の点を考慮してください。
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SAP ワークロードのすべてのコンピューティングニーズに対して 3 年契約を使用できるか。
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ニーズのうち、変化しないと確信が持てるものに対して 3 年契約を使用できるか。 例えば、SAP プライマリアプリケーションサーバー、プライマリデータベースなどです。
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SAP ワークロードは、AWS 組織の一部で、今後 SAP 容量要件が変化してコンピューティングニーズが減少した場合に組織が超過分の容量を利用することができるか。
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SAP ワークロードは、AWS 組織の一部で、年中無休 24 時間体制ではない非本番稼働環境のコンピューティング性能を共有することができるか。
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中期的な容量の変化が生じた場合、3 年契約を通じて得られるメリットは、容量を使い切れないことによる無駄を上回るか (例えば、短期契約と比較したときの損益分岐点が 20 か月目か)。
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短期的に発生するビジネスの大きな変化や置き換えに影響されやすいアプリケーションについて、短期契約 (1 年) を検討できるか。
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為替変動を考慮に入れる必要があるか。AWS の料金は (AWS China を除いて) 米ドル (USD) で設定されています。固定された為替レートが望ましい場合は、全額前払いの料金モデルを検討してください。
ワークロードの容量要件に合った契約期間を選び、割引を最大限に活用できるような計画を立てます。

提案 20.2.3 – コンピューティングタイプを固定して割引を最大限活用するのが適切かを評価する
SAP ワークロードは、一般に AWS コンピューティングタイプの一部しか使用しません。そのため、特定のコンピューティングファミリーまたは特定のインスタンスタイプを契約することが割引の最大化に適しているかどうかを検討する必要があります。コンピューティングの料金アプローチとして割引率が最も高いのは、EC2 Instance Savings Plans と標準リザーブドインスタンスです。
以下の点を考慮してください。
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お使いの環境で最も使用頻度が高いコンピューティングタイプを調べ、特定の EC2 Instance Savings Plans または標準リザーブドインスタンスの購入を検討します。例えば、複数の SAP アプリケーションで
m5.xlarge
をアプリケーションサーバーとして使用している場合です。その場合、契約プランを常時使用する可能性が高いので、EC2 の特定の Savings Plan または標準リザーブドインスタンスが適しています。 -
ワークロードの成長やビジネスイベントの発生時に EC2 ファミリーを変更する可能性が高いコンピューティングコンポーネントを特定します。これらのコンポーネントについては、より汎用性の高い Compute Savings Plans またはコンバーティブルリザーブドインスタンスの購入を検討してください。例えば、たった 6 か月後にサイズの増加が原因で EC2
r5
とX1e
の間で移行しなければならない SAP HANA データベースがある場合です。それには、短期のコンバーティブルリザーブドインスタンスまたは Compute Savings Plan が適しています。 -
汎用コンピューティングと特定コンピューティングの料金を比較して損得分岐点を割り出し、それを考慮した上で契約タイプを選択します。例えば、サイジングが 3 年目に変化する場合は、標準リザーブドインスタンスを 3 年分購入する方が、3 年契約のコンバーティブルリザーブドインスタンスを購入するより安い場合があります。また、リザーブドインスタンスの残存期間を AWS リザーブドインスタンスマーケットプレイスで販売してもよいでしょう。
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インスタンスタイプを変更する前に、AWS マーケットプレイスでプライベートの販売者が出品しているソフトウェアや 1 年サブスクリプションのソフトウェアの使用を確認します。そうすることで、余計なソフトウェアコストの発生を防げます。どちらのプランも、ソフトウェア製品を指定の期間にわたって Amazon EC2 インスタンス上で実行することを約束する代わりに、割引が受けられます。例えば、
r4.xlarge
インスタンスでソフトウェアを実行する 1 年間のサブスクリプションを購入します。その後、インスタンスタイプをr5.xlarge
に変更することにしました。サブスクリプションはまだアクティブですが、インスタンスには適用されなくなります。その結果、r5.xlarge
上のソフトウェアに対して追加のオンデマンド料金を払う必要が生じます。年間サブスクリプションの有効期限が切れるのを待ってからインスタンスサイズを変更することを考えてください。
提案 20.2.4 – Savings Plans とリザーブドインスタンスのどちらが適切か、あるいは両方使用すべきかを評価する
対象となる SAP ワークロードに適しているなら、Savings Plans とリザーブドインスタンスを併用して異なるモデルからメリットが得られるようにしましょう。契約期間とコンピューティング要件を総合的に判断し、料金モデルを選びます。
Savings Plans とリザーブドインスタンスの違いについては、[コスト最適化]: ベストプラクティス 18.1 - Amazon EC2 の利用可能な支払いおよび契約オプションを理解する および Compute Savings Plans and Reserved Instances (Compute Savings Plans とリザーブドインスタンス) を参照してください。
[信頼性]: ベストプラクティス 10.2 - 可用性および容量要件に適したアーキテクチャを選択する .Savings Plans とリザーブドインスタンスのキャパシティ予約の違いおよびトレードオフについて解説しています。
提案 20.2.5 – 予算および追跡の目的で容量計画をコストモデルに変換する
Savings Plans、リザーブドインスタンスの選択肢、オンデマンド予算をコスト計画に変換し、少なくとも 3 年にわたる SAP 環境の AWS 支出を見積もります。予算および追跡の目的で、コンピューティング見積もりと他の AWS コストを組み合わせて SAP ワークロードのコストモデルを完成させます。
SAP コストを見積もる際、必ず次のコストを含めます。
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コンピューティングに不随するストレージのコスト (Amazon EBS ボリュームなど)
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共有ファイルストレージのコスト (Amazon EFS、Amazon FSx など)
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バックアップストレージのコスト (Amazon S3、Amazon S3 Glacier など)
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ネットワークおよび VPC のコスト (Elastic Load Balancer、NAT ゲートウェイ、Transit Gateway、ネットワークアウトバウンドコスト、Direct Connect、VPN など)
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管理およびガバナンスサービスのコスト (CloudWatch の詳細なメトリクス、AWS CloudTrail、AWS Config など)
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セキュリティサービスのコスト (AWS WAF、Amazon GuardDuty、AWS Shield など)
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AWS Support のコスト (Business または Enterprise)
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エンタープライズ割引プログラムまたは従量制割引が利用できないか検討する (担当の AWS アカウントマネージャーに詳細を問い合わせてください)
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通貨: AWS の料金は米ドル (USD) で設定されています。請求通貨は選択できます。請求通貨を選択すると、米ドルで計算された請求額が市場で適切な為替レートで選択した通貨に換算されます。