OPS01-BP06 メリットとリスクを管理しながらトレードオフを評価する - 運用上の優秀性の柱

OPS01-BP06 メリットとリスクを管理しながらトレードオフを評価する

複数の関係者の利害が対立している場合、労力の優先順位付け、機能の構築、ビジネス戦略に沿った結果の実現が難しくなることがあります。例えば、IT インフラストラクチャコストの最適化よりも、新機能の市場投入までの時間短縮を優先させるよう求められる場合があります。これにより、2 つの利害関係者の間で対立が発生します。このような場合、対立を解消するには、より上位の権限者に決断を委ねる必要があります。意思決定プロセスから感情的な固執を取り除くには、データが必要です。

戦術レベルでも同様の問題が発生する可能性があります。例えば、リレーショナルデータベースまたは非リレーショナルデータベースのどちらを使用するかという選択が、アプリケーションの運用に大きな影響を及ぼす場合があります。さまざまな選択肢で予想される結果を理解することが重要です。

AWS は、AWS とそのサービスについてチームを教育し、選択がどのようにワークロードに影響を与えるかについての理解を深める支援を行います。チームの教育には、AWS Support 提供のリソース (AWS ナレッジセンターAWS ディスカッションフォーラムAWS Support センター) や AWS ドキュメントを使用します。さらに質問がある場合は、AWS Support までお問い合わせください。

また AWS は、The Amazon Builders' Library で運用に関するベストプラクティスとパターンも共有しています。AWS ブログ公式の AWS ポッドキャストでは、その他さまざまな有益な情報を入手できます。

期待される成果: クラウドデリバリー組織内のあらゆるレベルでの重要な意思決定を促進する、意思決定ガバナンスフレームワークが明確に定義されています。このフレームワークには、リスク登録簿、意思決定の権限を持つ定義済みの役割、考えられる意思決定の各レベルに対する定義済みモデルなどの機能が含まれています。このフレームワークでは、対立の解決方法、提示すべきデータ、オプションの優先順位付けの方法が事前に定義されているため、決定が下されたらすぐに決定にコミットできます。意思決定のフレームワークには、すべての意思決定のメリットとリスクを確認して比較検討し、トレードオフを理解するための標準的アプローチが含まれています。これには、規制コンプライアンス要件の順守などの外部要因が含まれる場合があります。

一般的なアンチパターン:

  • 投資家からは、Payment Card Industry Data Security Standards (PCI DSS) への準拠を実証することが求められています。投資家の要求に応えることと、現在の開発活動を継続することとのトレードオフについて検討しません。代わりに、準拠を実証することなく、開発作業を進めます。投資家は、プラットフォームのセキュリティと、投資の是非に懸念を抱いて、会社に対する支援を停止します。

  • 開発者の 1 人がインターネットで見つけたライブラリを含めることにしました。不明なソースからこのライブラリを採用するリスクを評価しておらず、脆弱性や悪意のあるコードが含まれているかどうかはわかりません。

  • 当初ビジネスが移行を正当化した理由は、アプリケーションワークロードの 60% のモダナイゼーションに基づくものでした。しかし、技術的な問題により、モダナイゼーションは 20% に留めるという決断が下されました。これにより、計画していた長期的メリットは減少し、インフラストラクチャチームがレガシーシステムを手動でサポートするためにオペレーターの労力が増え、この変更を予定していなかったインフラストラクチャチームでの新しいスキルセットの構築に大きく依存することになりました。

このベストプラクティスを活用するメリット: 取締役会レベルでのビジネスの優先順位を十分に調整し、これをサポートできます。成功の達成に伴うリスクを理解し、十分な情報に基づいた意思決定を行うとともに、リスクが成功のチャンスを妨げる場合に適切な措置を取ることができます。意思決定がもたらす影響と結果を理解することで、選択肢に優先順位を付けやすくなり、リーダーはより迅速に合意に達することができるため、ビジネス成果の向上につながります。選択肢のメリットを特定し、組織のリスクを認識することで、事例に頼った意思決定ではなく、データドリブンな意思決定を行うことができます。

このベストプラクティスが確立されていない場合のリスクレベル:

実装のガイダンス

メリットとリスクの管理は、主要な意思決定の要件を決定する運営組織が定義すべきです。関連するリスクを理解した上で、決定が組織にもたらすメリットに基づいて意思決定を行い、優先順位を付けます。組織の意思決定には正確な情報が不可欠です。この情報は、信頼性の高い測定に基づき、費用対効果分析という一般的な業界慣行によって定義されたものである必要があります。このような決定を下すには、中央集権型と権限分散型のバランスを取ります。必ずトレードオフはあるため、それぞれの選択肢が定義された戦略と期待されるビジネス成果にもたらす影響を理解することが重要です。

実装手順

  1. 包括的なクラウドガバナンスフレームワーク内でメリットの測定方法を定式化します。

    1. 中央集権型の意思決定と、権限分散型の意思決定のバランスを取ります。

    2. あらゆる意思決定で負担の大きい意思決定プロセスを実施することが遅延につながることを理解します。

    3. 意思決定プロセスに外部要因 (コンプライアンス要件など) を組み込みます。

  2. さまざまなレベルの意思決定について、合意に基づいた意思決定フレームワークを確立します。このフレームワークには、利害の対立が関わる意思決定を解決すべき人物が含まれます。

    1. 取り消しが効かない可能性のある「ワンウェイドア」(一方通行の扉) の意思決定を一元化します。

    2. 下位レベルの組織リーダーが「ツーウェイドア」(双方向に行き来できる扉) の意思決定を行えるようにします。

  3. メリットとリスクを理解し、管理します。決定のメリットと関連するリスクのバランスを取ってください。

    1. メリットの特定: ビジネスの目標、ニーズ、優先順位に基づいてメリットを特定します。例として、ビジネスケースへの影響、市場投入までの時間、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コストなどがあります。

    2. リスクの特定: ビジネスの目標、ニーズ、優先順位に基づいてリスクを特定します。例として、市場投入までの時間、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、コストなどがあります。

    3. リスクに対するメリットの評価と十分な情報に基づく意思決定: ビジネス、開発、運用を含む主要関係者の目標、ニーズ、優先順位に基づいてメリットとリスクの影響を決定します。メリットの価値を、リスクが現実化する可能性とその影響のコストに照らして評価します。たとえば、信頼性よりも市場投入までのスピードを重視すると、競争上の優位性が得られます。ただし、信頼性の問題がある場合、稼働時間が短くなる場合があります。

  4. コンプライアンス要件の順守を自動化する主な意思決定をプログラム的に実施します。

  5. バリューストリーム分析や LEAN など既知の業界フレームワークと機能を活用して、現状のパフォーマンスやビジネスメトリクスのベースラインを定め、これらのメトリクスの改善に向けた進捗の反復を定義します。

実装計画に必要な工数レベル: 中〜高

リソース

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